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ブランド力を“不便な立地”で作る -店舗のUX-

集客しづらいエリアに敢えて出店

Minimalは、2014年12月に富ヶ谷本店からスタートしました。

当初、立地を相談した人達からは結構なダメ出しをもらいました。人通りが多く高単価を受け入れている表参道や青山、中目黒などを強くおすすめされたのです。私達の考えに賛成してくれる人は皆無でした。

なぜなら本店のある場所は、代々木公園駅もしくは代々木八幡駅から徒歩6分の住宅地という、わざわざ訪れるような立地ではないからです。

ここ数年は近隣の富ヶ谷、奥渋エリアにコーヒーやパンの人気店が増えましたが、そこからも少し離れているため人が流れて来やすいとは言いにくく、小売業としてはかなり悪い立地です。

重要なのは、“絶対にまた来たい!”お店となれるかどうか

なぜそんな場所に店を構えたのか?すべてはお客様とゆっくり話すためです。

私達が考えていたのは、お客様に「また来たい」と思ってもらえるかどうか、この一点のみ。これがどれ程の感情なのかというと、二度と忘れない、人生で一番の体験だ、人に言わずにはいられない、くらいの感動です。

というのも、お客さんは普通にこう思うはずです。

・ナニソレ
  →「チョコはチョコでしょ?何が違うの?」
・高い
  →「チョコが1000円するの?何で?」

同じく嗜好品であるコーヒーやワインは、既に文化があるため今さらウンチクを言われなくてもお客様たちはなんとなく分かっているし、学びたい姿勢がある。

けれどチョコレートにはそれらがまだありませんでした。

だからこそ、私達はMinimalのチョコレートの背景とそこに宿る価値を、実際に試食しながら、楽しみながら、話して、最後には「絶対にまた来たい!」と思ってほしかったのです。

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そうは言っても私達の商品は馴染みがないものですし、食品・嗜好品なので好みが当然あります。

なのでブランドにとって「絶対にまた来たい」が最高かつ合格点だとすると、「楽しい/面白いけど好みじゃなかった」は仕方ありません。絶対に避けなければならないのは「楽しくないし記憶にも残らなかった」、このゾーンです。

利便性、機能性、価格勝負ではない私達のようなブランドができることは、ひたすらに「絶対にまた来たい!」を狙うことのみ。

そのための手段として選んだのが、お客様とゆっくり話すことができる人通りのこの立地でした。

満足度を最大化するための“不便”な立地

お店には、「期待値先行型」と「満足度先行型」があると思います。

前者はたとえば「良い立地で『日本初上陸!』などで話題になって人が集まるお店」で、後者は「口コミなどでじわじわと広がって人が集まるお店」のことです。

既存のチョコレート市場で、Bean to Barという新しくてしかも安くない商品を多くの人に知ってもらいたいと考えた時、私達は「満足度先行型」を目指した丁寧な接客しかないと考えました。そこで前述のような集客に不利な立地を選んだのです。

「期待値先行型」で、華々しい前評判を醸成し、便利な場所で高回転なお店を作るやり方は初速は良いかもしれません。しかし、特にMinimalの場合は商品の価値が伝わっていないと一過性のブームで終わってしまうと考えたからです。

そうは言っても、立地は気づいたところで後からどうにもできない要素なので、判断には慎重になるべきです。不便な立地にするということは、来てもらうためのハードルが高くなるのは間違いありません。単純に徒歩3分と徒歩6分を比較すれば、集客で2倍どころではない差が生まれるのは容易にイメージできるでしょう。

立地に関しては私達も悩みましたが、長い目で見た時に丁寧な接客とお客様の満足度を上げるために必要な距離と決断して出店を決めました。

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不便な立地が、“相思相愛なお客様”を呼びこんでくれた

富ヶ谷本店の立地は、結果として正解でした。

私達も自分達のことをお客様に話したいのですが、わざわざ来てくれるお客様の感度が高いので逆にたくさん質問をいただくのです。そのため滞在時間が5分や10分は当たり前、15分や30分以上も珍しくありません。そしてお客様の来店きっかけのほとんどが口コミなおかげで、プロモーションの手間とお金をかけずに済みました。

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お店をはじめてみて思ったことがあります。

お客様がまるで遠距離恋愛で久しぶりに会えた恋人のようなテンションでいてくれるのです。「やっと会えたね、たくさん話そう」というテンション。そんな高揚感を持って来てくれるお客様たちは、こちらがどんなに長い話をしても楽しそうに聴いてくれるのです。

また、不便な立地のお店にわざわざ目的なく来る人はいないので、限られた商品在庫や接客の時間を、相思相愛のお客様に届けることができます。

不便さを感じるのは期待値が低いから

これはもっと言えば、「わざわざそんなことしないといけないのか」と思う状態のことです。逆に期待値が高いと人は不便に思わず、「そのためならそんなことは容易いことだ」と感じるのだと思います。

別に、1時間山道を歩いて来てくださいと言っているわけではなく、10万円払って飛行機に乗って来てくださいと言っているわけでもない。

なのにみんな、強制されてもいないし他にも選択肢があるのに、それでも山奥の人気のそば屋さんに行ったり、海外に遊びに行ったりする。逆に「腹を満たしたいだけなのに15分も歩くのか」というのもあったりしますよね。

満足度が上がれば、期待値が上がる

なので極論を言えば、私達のような「絶対にまた来たい!」を実現したいお店は、「不便」という概念にとらわれてはならず、期待値を高めることに専念すべきと言えるかもしれません(でも立地も本当にとても大切です)。

いわば期待値はブランド力とも言えるかもしれません。「まだ体験していないものに対する期待や信頼」がブランドの持つ力ということです。

そして「期待値の低さ」は、「満足度の低さ」の写し鏡とも言えるかもしれません。満足度があがったお客様の口コミなどによりブランドに対する期待値が上がり、不便さは下がるということです。

期待値のつくり方を考えれば、本質的な“不便さ”が見えてくる

世の中のビジネス学は「より便利に、より安く」と言います。それもまた真です。ただそれは「便利さと安さ」を武器にして戦うビジネスが多くて、大きいからです。強みを伸ばすのは鉄則ですが、私達の仕事、皆さんの仕事にとって「便利さと安さ」が最重要かと言えばどうでしょうか。

しつこいですが、もちろん立地の不便さは圧倒的に集客に影響します。ただ、外しちゃいけないキーとなる要素は何だっけという話です。

私達にとってのキーは、作る数に限りがあるなら良いお客様に売るほうが良いということです。そのためにお店に訪れる期待値をどうつくるか、そのために適した立地条件は何か、と考えていきます。

こうして期待値をつくる方法を考えていけば、外してはいけないことから本当の意味での不便さや好都合なことが見えてくるかもしれません。

まとめ -期待値と不便さのギャップが来店に繋がる-

私達が敢えて不便な立地を選んだのは、お客様とゆっくり話すためです。それは「絶対にまた来たい!」と思ってもらうほどに満足してほしいから。また、この立地は「わざわざ来てくれる」相思相愛なお客様をもたらしてくれました。そうして満足度が上がったお客様の期待値が上がり、不便な立地はお客様にとってハードルではなくなっていくのです。

つまり私達は期待値と不便さのギャップが大きいほど、お客さんのアクション(来店)が生まれると考え、ブランド力、満足度による集客に賭けた、というのがふりかえると今になって整理できたところです。

🍫

店舗のUXについていくつかのテーマでお話をしようと思って書き始めましたが、1つのテーマで1記事になってしまいました。

次回は「内装や接客の空間づくりなど」をお話しようと思います。どうぞお楽しみに。

Minimal 富ヶ谷本店について

・営業時間
  - 11:30~18:00 ※当面の間
  - 定休日無し
・住所
  - 〒151-0063 東京都渋谷区富ヶ谷2-1-9(Google Map
・電話
  - 03-6322-9998
・アクセス
  - 東京メトロ千代田線 代々木公園駅:1番出口(八幡口) 徒歩6分
  - 小田急線 代々木八幡駅:南口徒歩6分

※ご遠方の方や、外出を控えたい方は、オンラインストアにぜひお越しください。




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