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Minimal の"人"起点のブランド戦略 Vol.2「“人”から始まる店舗展開」

2014年創業のMinimalは、今年10周年を迎えます。

Minimalは、ものづくりに心血を注ぐブランドです。
そして良いモノとはお客さまに伝わった時に初めて良いモノとなります。

そのため、Minimalでは、いかに良い顧客体験(UX)と共にチョコレートを届けるかをブランド戦略の肝においています。

そんなMinimalのUX戦略を赤裸々に語るnoteを、毎年バレンタイン時期に全3話でお届けしています。

第2話となる今回のテーマは、創業時から大事にしてきた体験(UX)の重要なタッチポイントに据えている「店舗」です。
人を基軸にした店舗展開戦略についてお伝えしていきます。
※第1回はこちら


店舗は買う場所から世界観を体験する場所へ

ネットで何でも変える時代に、リアルな店舗の必要性やその役割が変化しつつあります。

店舗をただ買い物をする場所と捉えると、限界が来ている時代に成りつつあり、単なる購買機能をもつだけでなくブランドの世界観を体験していただく場所に変化を迫られています。

リアル店舗で最も大事なことこそUX

Minimalの店舗は業態は増えるものの、昔も今も大事な部分は変わっていません。

Minimalでは、リアル店舗の意義は2点あると捉えています。

1つめは、そこにしかないサービスと世界観を体感していただく場所。
2つめは、これまで接点を持てなかったお客様とのタッチポイントとして機能させられることです。

オンラインストアを強化しながら、去年はリアル店舗の数を2倍に増やしました。

店舗では、チョコレートという商品を取り巻くどんな体験をしてもらえるか。その設計に大きな力を注いでいます。

お客さまの買い物体験(UX)を豊かにするために、どのような考えのもと、出店戦略を整理したのか。その裏側を設計や思想をお届けしていきます。

キーワード1:"人"の魅力を最大化する店舗業態

Minimalでは、「1店舗1業態」という出店戦略を掲げています。

店舗ごとにサービス内容も内装コンセプトも立地も変えています。今4店舗展開していますが、4店舗とも違う業態で4つ業態展開しているのです。

これは、これまでの小売店舗の出店戦略とは一線画する戦略です。

多くの小売店舗はチェーンストア戦略と呼ばれる、同じフォーマットの店舗を多店舗展開する戦略です。
同じフォーマットの店舗を増やすことで、お客さまのリーチする利便性を高め、出店コスト、仕入れ仕込みコストなどを落としていき、売上と利益を上げていく戦略です。

Minimalでは、このチェーンストア戦略を採用せず、1店舗1業態戦略を持っています。

これは、ある意味で非効率性を内包する戦略でビジネスの効率だけを考えると普通は採用しません。

しかし、上述しているように、お客さま体験(UX)を第一に考え、ブランドとしてお客さまと深く繋がっていくために、通常の常識とは一線を画する戦略を採っています。

そんな特異な戦略を成り立たせているのは、Minimalで働く“人”になります。

創業時から、代表山下の中に、ブランドは関わる“人”であるという考え方が強くありました。

店舗展開も、10周年を迎える中、多彩なスキルをもつメンバーが集まり、関わるスタッフの“得意”を活かしていく中で、今の「1店舗1業態」という戦略に至ったのです。

人には個性があります。それぞれの個性を活かして、チョコレートやカカオの関わり方のバリエーションを増やしていきたいという思いのもと店舗数=業態数という戦略になっています。

○富ヶ谷本店(板チョコレート専門店)
2014年の創業時に、代表の山下が好きだった「クラフトカルチャーを伝えられる場所」という決め手で奥渋谷に位置する富ヶ谷を選びました。

板チョコレートの新しいカルチャーや風味を伝えるために、お客さんとのコミュニケーションが大事でした。そのため、店内は壁に沿ってL型カウンターを設置し、入店したお客さんがどこにいてもカウンター越しのスタッフと接する動線ができました。

お店では常時10種類以上ある板チョコレートを実際に試食して頂き、スタッフとコミュニケーションしながら、チョコレートを選んでいただけます。
この積み重ねが、Minimalの接客スタイルである「ストーリーテラー」「フレンドリー接客」を生み出しました。

なぜ駅からも歩く富ヶ谷にわざわざ出店したのか、以下noteでも詳しく語っています。

○代々木上原店(ガトーショコラ専門店)
創業から数年して、豆から様々なチョコレートを造る技術と知識が備わり、拡がってきました。

加えて、職人チームに元パティシエやショコラティエがジョインしてくれました。

チョコレートの多様な表現と、パティシエやショコラティエの技術を合わせた次の展開が、チョコレートを使う定番であるガトーショコラをだす専門店でした。

まさに“人”が次の出店の決め手になりました。さらに、店長となったのは、元バリスタ出身者であったため、単なるガトーショコラ専門店で終わる事無く、全国のスペシャルティコーヒーの名店からコーヒー豆を仕入れて、その場で淹れる事で、コーヒーとガトーショコラのペアリング体験ができるお店となっています。
“人”の技術やできる事がお店の業態となっています。

○祖師ヶ谷大蔵店(工房併設のパティスリー)
祖師谷大蔵に出店したパティスリーは、元パン職人の腕を活かす焼き菓子や、元レストランパティシエのメンバーの才能を活かすデセールもお楽しみいただけるお店に。

持ち帰ってすぐ食べることが多い生菓子のため、近所に根付いた商店街のある街で、潜在顧客となりうる若いファミリー層が多く居住するエリアという点で祖師ヶ谷大蔵を選びました。

また、店内からはもちろん、外からも工房の中が見えるため、Minimalで働く“人”の様子がより可視化されている店舗と言えます。

○レストラン形式のコースを楽しむ麻布台ヒルズ
チョコレートのコース料理(レストラン)が楽しめる麻布台ヒルズ店は、ストーリーテラーと呼んでいるサービサー(販売スタッフ)がより活躍する店として誕生しました。

Minimalの創業10年でやってきた様々な商品やサービスの集大成と、長年勤務してくれているスタッフ達の知識や接客スキルを活かすお店です。

カウンター6席のイートインでは、じっくりカカオとチョコレートをさまざまに楽しみながら、スタッフのご説明もお楽しみいただけます。全国から注目を浴び、インバウンド層も想定できる麻布台ヒルズを選んでいます。

実は、全店舗に共通するのがカウンター席であること。お客様とのコミュニケーションをとりやすい設計にしています。

リアル店舗の目的は、LTVを高め、お客様に感じていただける価値を育てることにあると思います。「買い物だけ」の店舗ではなく、スタッフとお客様のコミュニケーションのとりやすさを最も重視しています。

UX的観点1: 人対人がつくられやすい構造
Minimal各店舗は個性豊かなメンバーにフォーカスし、その個性を活かす店として誕生してきました。そしてそこで働く人ならではの接客をお客様にご体験いただけるようカウンター席にするなど、コミュニケーションの取りやすい環境づくりをしています。

キーワード2:人の育成

「1店舗1業態」ということは、店舗を新出店するごとに「新業態」に挑むことを意味します。
これは人の育成の観点で考えると、難易度が上がるようにも見えます。

しかしMinimalの実感としては因果関係が逆で、人が育って自分たちでできることが増えていった結果、異なる業態として結実したと捉えています。

特にパティシエ・ショコラティエのものづくりの精度とクオリティが向上したことが、「1店舗1業態」戦略を取れる基盤となりました。
 
人の育成は、どんな会社でも課題となる点だと思います。
Minimalでもまだまだ試行錯誤中な点ではありますが、そんな中でもたくましい成長を遂げるメンバーも現れています。

全員の目線をあわせる機会を特に重視し、以下のような機会を設けています。

社内勉強会
アルバイトスタッフ含めた全員で新商品やブランドについて学ぶ月1回の社内勉強会を設けています。

少しずつスタッフが増える中で、代表とアルバイトスタッフの間には距離ができてきます。
経営陣は店舗にもよく足を運んでいるものの、直接ブランドの目指す方向や今考えていることをじっくり共有できる機会はなかなかとれないため、社内勉強会はますます重要な機会となっています。

また、勉強会ではパティシエ・ショコラティエチーム、販売チームのアルバイトスタッフからチームの指針を体現するなどGOODな行動をしたスタッフを表彰する機会もあり、それぞれのスタッフがどんな想いで行動しているのかなどを相互に理解する場にもなっています。

メンテナンスデー
パティシエ・チョコラティエチームが、丸1日工房を離れ、メンバー全員で当月の振り返りを行います。
毎日の振り返りだけでなく、月に一回しかりと全員で共有する場があることで、スタッフ皆の現状とこれからを改めて考える機会にもなっています。時には外部研修という形で、お店で美味しい食事をとりながら、食のインプットと勉強を行います。
※メンテナンスデーについて詳しくは以下の記事より

 他にも、店舗チームでは月一回みなで集まってご飯を食べるなどの取り組みが行われています。

店舗には一様な「接客マニュアル」はないのも特徴です。
もちろん基本的なルールはきちんと存在しますが、ストーリーテラーとしてスタッフ一人一人が「自分の言葉」でお客様に向き合い、商品紹介ができることを重視しています。

これは、店舗のスタッフもまた「つくり手」であり、ブランドの理解者であると同時に「表現者」であってほしいという思いもあります。

もともと「スタッフの個性から業態が生まれた」経緯もあることから、今後もバラエティ豊富なスタッフが働けるようなチームでありたいと考えています。

UX的観点2: ”その人”ならではのコンテンツとストーリーが体験できる
杓子定規な接客ではなく、例えばその人が好きなコーヒーやワインの話が弾んだり、好きなお店が一緒だったり。そういったちょっとした話題や共通点からその人なりの個性が見えてきて、お客様もまたあの人と話したいから店舗に行こうと思っていただけると思います。商品開発も一緒で、お酒が好きだスタッフはお酒を使ったり、お酒とあわせやすかったりします。その人ならではのアウトプットで、さまざまなMinimalをお客様にお楽しみいただきたいと思っています。

キーワード3:体験が違うからこそ起こる、店舗回遊(スタンプラリー)

Minimalでは「Minimal Collective」というメンバーシッププログラムを運営しています。

お買い物ごとにランクアップして特典を受けられるサービスで、リアル店舗でもオンラインストアでも共通ポイントを蓄積できます。このプログラムを活かし、O2O(Online to Offline:オンラインからリアル店舗への動線)となる施策を用意しています。

インセンティブ(Impactレベル)のステップ初期段階で、店舗限定クーポンを発行しています。
また4店舗の回遊を促す施策として、同プログラムを使った「スタンプラリー」企画を行いました。

これはお客さまに好評を得た施策で、
「富ヶ谷店で板チョコレートを購入する事が多かったが、この機会に祖師ヶ谷大蔵店でケーキを食べてMinimalのチョコレートの楽しみ方が拡がった」
など、嬉しい感想を頂きました。

4店舗が異なる業態が用意されているので、それぞれの店舗で違う商品や違うサービスを受けられる期待感を得やすく、他店舗を訪れるモチベーションを得やすいと考えています。

例えば同じチョコレートでも、富ヶ谷本店では板チョコレートで、代々木上原店ではガトーショコラで、祖師ヶ谷大蔵店では皿盛りスイーツで、いった感じで全く違う表現を楽しんで頂けます。

お客さまの店舗体験が増やせるほど、お客さまとブランドとの接点が増えて、結果としてLTVが高くなります。

実際にメンバーシッププログラムの購入履歴動向から、LTVが高くなるお客様は「どこかで一度店舗を経由している」というデータが取れていることからも、「店舗UX」の重要さは増していると考えています。

UX的観点3:顧客体験を見える化して、回遊を起こす
Minimal Collectiveは、ECアカウントを取得し、マイページに表示されるバーコード(アカウント情報)をリアル店舗でも読み込むことで、ステージ(Impact Level)を上げていく仕組みです。
特に店舗においては、行動履歴を見える化でき、次の顧客体験を豊かにするヒントになります。お店側からすると、ブランドをよくご利用していただくお客さまの行動パターンを理解出来ます。
一方でお客さまにとっては、違う店舗でお買い物をするとポイントもスタンプを貯まり、全店舗行くと特典が受けれるなど、楽しみながら余暇や買い物を充実させることができます。行動履歴の見える化は、良い顧客体験をつくっていくたくさんのヒントが含まれています。

今回は”人”を軸に、店舗戦略についてお伝えしました。次回最終回は、人起点の商品開発について語ります。

※第3話はこちら

Minimalバレンタイン特集ページ

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